de54à24

pour tous et pour personne

夏の日々と道化師

 
 
アボカドが育ってきたので、またまたお久しぶりです。
今年も下界は祇園祭の賑わいに台風が突っ込みそうで、別な賑わいを呼んでいます。
 
転じて私は、日々、吉田山田の音楽とラジオを聴き倒し、箸休めにとSEKAI NO OWARIデビューを果たしながら、毎日6時間から8時間、力尽くの翻訳作業に励んでいます。どのくらい力尽くかというと、私はごくごく初級のフランス語しか習得していないので、文法を中心に教えてもらいたいと仏語教室の門戸を叩くのですが、いま読んでいるテキストを参考にみせると、日本人やフランス人の先生が「専門性が高すぎて読めないので教えられない」ということで、優しく追い返される、そんなテキストを初級者未満が翻訳しているという力尽くの事態です。なので、本当は日に8時間でもまだ足りないのです。どうなるかわからないのですが、やるしかない。
 
まだ事務的には休学中なのですが、大学もゼミと学会の手伝いと飲み会を中心に復帰を果たしています。体調も誤魔化し誤魔化し、病院に行けば「それ以上痩せたらドクターストップだよ!」と毎回言われ続け流し続け、多少の増薬はあれどもなんとかやっています。研究室の学生たちの仲が良く、月に1度か2度は開催される10時間程度の飲み会はゼミなどではなかなか話す機会のない先輩後輩、そして先生と研究のことやプライベートなことをゆっくり話し合い笑い合えて、ゼミと同様に大切な時間です。学部のころは、いつもひとりで勉強をしたり、飲んでいたりしたから、困ったことを相談できる場所があるのは本当にありがたい。お酒を飲まない若者の増加が言われる昨今、あれだけの酒豪が集まるというのもあっぱれなかんじです。タイムマシーンで諸時代の文系の大学院生(書生)が集っても、みんな同じペースで飲む大宴が催されるような気がします──現代っ子だって負けないわ!梶井基次郎中上健次大岡昇平西田幾多郎三木清白川静のぐっと若き頃を招聘したら……と書いてみたら、それはタイムマシーンの一番正しい使い方のように思われてきました。
 
吉田山田はその代名詞である「日々」が有名ですが、旋律や歌声はもとより、歌詞の日本語が素晴らしいのです。聴いたことありますか?数年前、ETVで初めて聴いた「日々」では、
 
おじいさんはおばあさんを呼ぶ時も 名前じゃ呼ばない
おこった顔がいつもの顔 ただ嬉しい時には口笛ふく
 
の一節に初め、自分が混乱しているかと思うほどに驚かされました。いまでも、ふと思い出して頭や心の中で反復します。おじいさんの顔はいつも怒っているような顔、なのではなく、怒った顔がおじいさんのいつもの表情、なのです。おじいさんが怒っているのではなく、怒ってはいないけど怒っているように見えるのがおじいさんなんだ、というのが本当によく伝わります。
 

     

 
どの曲を聴いても、このような吉田山田の修辞学のツボミが二人の歌声と共に咲くのです。同じく言葉の世界にいる身としても、彼らと同じ長さの年月を生きてきた身としても、研究書からは学べないものをたくさんみせてもらっています。
 

     

 
(吉田山田の山田くんの世界観はなんとなくSEKAI NO OWARIに通じるところがありますが、彼はピエロではありません。帽子をとったところを見たことがないので、あの中になにか青鳥的なものを隠し持っているのかもしれません。MVに映っている右肩に垂れ下がった金髪の三つ編みは少し前に若乃花親方に断髪されたという不思議なお話があります。)SEKAI NO OWARIはまだ少ししか聴いていないのですが、「ピエロ」の
 
危ないから空中ブランコなんてしなくていいんだよ
 
のフレーズには、いつもドキッとしてから微笑んでしまいます。私は勿論ピエロではないけど、幼い頃からよく両親がなにかうまくいかなくて、もがいている私に「学校なんて大したことないんだから、いかなくたっていいんだよ、ね?」と言って、私が泣くのを優しく微笑んで見守ってくれていたのを、あまりにも生々しく思い出すのです。私は両親に二度、生命を与えられたのです。
 
「私がやらなきゃ、誰がやるの!」と
そう言って君は泣いた
 
私のような不登校児やいじめられている子のニュースを見るたびに、私が両親からもらったあの言葉、SEKAI NO OWARIが歌っているあの言葉が届いてほしいと思います──大したことないんだから、嫌なら別なことをすればいい、いつか大切なことがなにか気づいたら、その時やればいいんだよ、ね?大切なことの入り口はとても小さくて見えにくいのだから。
 
危ないから空中ブランコなんてしなくていいんだよ
「私がやらなきゃ、誰がやるの!」と
そう言って君は笑う
 
このフレーズが2回反復されてから、
 
危ないから空中ブランコなんてしなくていいんだよ
「私がやらなきゃ、誰がやるの!」と
そう言って君は泣いた
 
そして最後に、
 
危ないから空中ブランコなんてしなくていいんだよ
「私がやらなきゃ、誰がやるの!」と
そう言って君は笑った

 

ピエロ

ピエロ

  

普段は、菊地成孔さん関連かhydeさん関連の音楽くらいしか反復的に聴かないのだけれど、ネットでいろんな分野の知識人の言説に触れるほどに、専門の研究以外のことばも使えるようになりたいと思うようになり、そして今は翻訳に拘束されている時間が長いので、それをしながら浴びることのできる聴覚モノを探求し始めました。歌詞のある音楽は、旋律と言葉が一体になっているところがおもしろいですね。
 
それから、秋の某学会全国大会での発表が決まりました。初めての学会で、かなり緊張していますが、歩幅はそのままに淡々とやっていきます。そうすれば、緊張のなかでも自分を楽しませることを探求していけそうな気がします。そして、その少し前、夏の終わりに小学生時代4年を過ごした仙台で、小学校の同窓会が開かれるとの連絡をもらいました。叶えば、20年ぶりの再会です。あの子やあの子は、来るかなぁ……みんな、結婚してるんやろなぁ……。
 
政治的に殺意にも似たどうしようもない気分になりますが、それでも 
Wish a beautiful summer for you!!
 (台風11号には十分に気をつけて。)
 
 
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