de54à24

pour tous et pour personne

essai

「どうして私を生んだの?」

年末に二回、中学時代の同窓会が行われた(私は体調的、地理的理由から参加を見送ったがせめて体調がよければぜひ顔を出したかったと思う程度にはいまでも仲のよい友人たちの集まりである)。まわりを見渡してみると、古くからの友人たちの大体半分弱くらい…

ラボルドの城

今朝は私がすきな歴史家のひとりであるカルロ・ギンズブルグの本としばらく睨めっこしていた。そろそろ読めてほしい。具合が悪いとそのことばかりを考えてしまってよくないから、本に願うようにして読みたい本を開く。大晦日の夜に初詣に出かけて、元旦にお…

空の青み

もし私が、「人間とは、もうひとりのほかの人間を映す鏡である」と言ったとすれば、自分の思考を表現していることになる。だがもし「空の青は人を欺く」と言うとすれば、そうはならない。私が仮に、思考を表現しようとする人間の口ぶりをもって「空の青は人…

夢は短し磨けよ[無]知を

年末年始の来客と猫が帰って行った。どうやら人の身体が環境に馴染むには4日もあれば十分のようで、特に来客のあった日と来客の去った日は同様のおちつかなさを感じている。どうしたらいいのか分からず自分を持て余しながら部屋を行ったり来たりしていたが…

頌春

敬頌新禧 ちこり村のおせちと、二日前から仕込んでいたお雑煮。 今日は、夕方に我が家のご先祖さまが代々眠るお寺の本山へお参りをした。我が家のお墓は、代々引き継ぎ私の父で14代目となる。祖父が曽祖父より早くに亡くなったため、曽祖父が他界した際に…

初詣まであと24歩54秒

本年のたくさんの素敵な出会いに心から感謝いたします。 そして次に広がる一年が、みなさまにとって喜びと希望に包まれた素晴らしい時となりますように。 2013.12.31 KS de Conejo

pulsing stilliferous Meaning

No, garbage rose first, inciting people to build a civilization in response, in self-defense. We had to find ways to discard our waste, to use what we couldn't discard, to reprocess waht we couldn't use. Garbage pushed back. It mounted and…

恋愛のディスクール

AFFIRMATION 肯定 一切に抗じて主体は、愛を価値として肯定する。 (ロラン・バルト『恋愛のディスクール・断章』三好郁朗訳, みすず書房, 1980, p. 36) 独りっきりだ── 愛されてないし、愛する相手もいない。世界中で私がいちばん怖れてきたことだ でも、…

早すぎる夜の訪れ

雪が降るかと思いきや、昨日の午後は冷たい霙と雨が街中で交互に降り注いだ。今年の年末は各地で雨が多いようだ。これもまた、人の暮らす街角や暦も知らぬ自然の大地が今年一年の一切を洗い流しているということか、気づくとそんな年の瀬の凍雨に聞き入って…

認知療法と絵画修復

私は週に一度、web上で日本と英語圏の各新聞の書評欄をスキャンすることにしている。そして大抵の場合、数誌の書評から興味のあるものを日英各一冊ずつ選び、書店か大学図書館で入手し目を通す。今週の課題図書は、文句なしに立木康介先生の『露出せよ、と現…

CHANEL le vernis 73

年内最後の診察日。混雑を予想して行った待合室には、めずらしく人ひとりおらず、殆ど到着と同時に診察室に通された。いつもの通り、穏やかな主治医といくつかのことばを交わす。いつもの通り、10分も掛からない診察は滞りなく終わる。昨日デパートのチョコ…

思考の経験としての臨床美学

今年の仕事の記録② 「思考の経験としての臨床美学のために──感情移入についての報告」 0. はじめに 2012年度に提出した卒業論文では、フランスの思想家・美術史家ジョルジュ・ディディ=ユベルマンによる「もうひとつの美術史」を手掛かりに、パノフスキー以…

二つの降誕祭

久しぶりにfacebookを覗くと、旧友たちが毎冬と同じように日本各地、世界各地でクリスマスホリデーの陽気さに包まれながらそれぞれのクリスマスを楽しんでいる様子であった。クリスマスもお正月も、基本的には集まって物を食べ酒を飲み、イルミネーションや…

クレオパトラのレクイエム

私はとにかく浅田真央というスケーターの姿をみると、それがどんな場所であれ瞳を潤ませずにはいられない質の人間で、彼女の演技はいつもはやく見たくてたまらないのだけど、その気持ちとまったく同じ強さで見るのが怖いとも思っていて、いつもその二つの気…

our music

Keiichiro Shibuya - ATAK015 for Maria - Our Music ... その頃私は睡眠薬を飲み干してからベッドに横たわり、毎晩のように渋谷慶一郎さんのピアノを聴いていた。「ATTAK015 for maria」。最初は確かに両耳で聴いていたはずの旋律が間もなく皮膚を通してま…

「作者とは幸いにして人間ではない」

毎晩本の読み聞かせをしてくれていた母の努力の甲斐なく、私は小さい頃から読書というものが好きではなかったし、もっと言えば苦手ですらあった(今でも時折本から学ぶことの多さや、若者に本は素晴らしいと説くものをみては、この人は本がなきゃ多くのもの…

魔法の角砂糖

イベント事やレジャーが大好きな父のおかげで、度々子供たちの学校を休ませてまでディズニーランドやスキーに出かけていた我が家(しかも往々にしてペットたちも同行するため車の中は大賑わいで、信号で止まると隣の車の中の人たちがよく笑っていた)ではあ…

天使と/の再会

数年前、とかく体調が悪く、コンビニに行くこともままならなかった頃、私は暇つぶしに──といっても、鬱状態の人間にとって持て余した時間というのは殆ど絶望に等しい──昼夜問わずにTwitterに張り付いては、流れ来ては流れ去る小さなさえずりと戯れてることで…

LOVERS 永遠の恋人たち

キャンパスに赴くと、真っ赤に染まった紅葉が雨に打たれながら落葉していた。研究室では、どうやら昨晩ここに泊まったらしい先輩が眠気まなこでコーヒーを淹れたりPCを弄ったりしていた。暦ではもう師走も半分が終わったというのに、この街や大学の研究室…

『精神医学は対人関係論である』

今の主治医に出会ったのはおおよそ二年半前。それまでにも、ここ数年の間に現在の病院の内外で三人の精神科医に掛かっている。初めて精神科に掛かったティーンにもならない頃から換算すれば約二十年、七人目の主治医にしてようやく信頼のおける病院、医師と…

無へ落ちる casus in nihilo

長いこと体調や情緒の安定に欠いた生活をしていると、もうそれだけで忙しく、他のことにはなかなか手が回らないものである。まるで言うことを聞かない小さなこどもを何人も抱えながら、食べることや眠ることも十分にできない母親のような状況とでも言えるか…

4階の屋上から見えたもの

元気なときもそうでないときも、なにをやってもだめなだと思う日には、いっそのことなにもしないと決めてしまうことにしている。しかし、生存している者にとってはもちろんなにもしないということほど難しいものはないため、必ずなにかしらのことはしてしま…

「僕は夜が好きなんだよね」

完全に眠り方を忘れてしまった。その上、寝室に入りたくない。最後に目覚めてから何日たったのだろう。買ってきたコーヒーを落として暖めた豆乳に垂らせば、数時間の眠りと同じくらいの安らぎが得られるような気がしている。 もはや恋だのときめきだのに関心…

星屑のささやき

外気を吸って煙を吐き出す。黒いセブンスター、リアルスモーク。冷たいベランダに展開する突然の星空。この空にはこんなにも多くの星が隠れていたのか。太陽が昇りきってもまだ吐く息が白くなり始めた日は、この青空を担保する真夜中の闇ですら無数の星を含…

闇のなかから

メジャーなSNSは一通り試してみたし、なんならかなり力を入れていたものもいくつかある。しかし、思えばブログというブログはそういえばちゃんと書いたことがない。書こうと試みたことは何度かあったけれど、SNSのアカウントをすでにいくつか操ってい…